「YMYLとは?説明から取るべき対策まで」
2025年10月10日
YMYL(Your Money or Your Life)とは、Googleが検索品質評価ガイドラインの中で定める、ユーザーの人生や財産に深刻な影響を与える可能性のあるトピックを指します。直訳すると「あなたのお金、あるいはあなたの人生」となり、誤った情報や質の低いコンテンツが、人々の健康、経済的安定、安全、幸福といった根幹に関わる事柄に、無視できないほどの損害をもたらすリスクがあるため、Googleはこれらの分野のコンテンツに対して特に厳しい品質基準を設けています。ウェブコンテンツ制作者にとって、YMYLの概念とその対策を理解することは、検索エンジンでの評価、ひいてはサイト運営の成否を分ける極めて重要な要素となります。
YMYLの対象となる具体的なトピック
YMYLに含まれるトピックは非常に広範にわたりますが、Googleのガイドラインでは、人々の生活に重大な影響を与える以下のカテゴリーの情報がこれに該当するとされています。
①金融・経済に関する情報
投資、税金、退職後の計画、ローン、銀行、保険など、人々の金銭的な状況に直接関わる情報。誤ったアドバイスは、重大な経済的損失につながる可能性があります。
②健康・医療に関する情報
病気や症状、薬、治療法、食事、健康維持、サプリメントなど、身体的・精神的な健康に影響を与える情報。誤った情報は、健康状態の悪化や生命の危険につながるリスクを伴います。
③安全・法律に関する情報
災害時の避難情報、自動車の安全情報、特定の製品の安全性、犯罪、法律、公的なサービス(役所の手続きなど)に関する情報。個人の安全や権利の侵害に直結します。
④その他、人生の重大な決断に関わる情報
人種、宗教、国籍、性別、性的指向など、差別的な内容を含む可能性のある情報。また、投票、政治、市民の権利など、社会全体に影響を与える情報も含まれます。
これらのYMYLトピックでは、コンテンツの信頼性が「高い」か「低い」かによって、ユーザーが得る利益や被る不利益の大きさが劇的に変わります。Googleは、その検索結果を通じて、人々に害をなす可能性のある情報が上位に表示されることを最大限に防ごうとしているのです。
E-E-A-Tの徹底:YMYLコンテンツ評価の核
YMYLコンテンツを評価する際、Googleが最も重視する概念が、E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)、すなわち「経験、専門性、権威性、信頼性」です。特にYMYL分野においては、このE-E-A-Tの、特に最後の要素である「信頼性(Trustworthiness)」が極めて厳しくチェックされます。
・経験 (Experience):
コンテンツのテーマについて、実際に経験したことのある人が書いているか。
・専門性 (Expertise):
コンテンツ作成者やWebサイトが、そのトピックに関する知識やスキルを持っているか。例えば、医療情報であれば医師や薬剤師、金融情報であればファイナンシャルプランナーなど。
・権威性 (Authoritativeness)
そのトピックに関して、 Webサイトやコンテンツ作成者が業界や社会から認められているか。他の専門家や公的機関から参照・引用されているか。
・信頼性 (Trustworthiness)
コンテンツが真実であり、正確で、安全であることを保証できるか。YMYLにおいては、この要素が最も重要であり、情報の出所、運営者の透明性、正確な事実に基づいているかが問われます。
YMYL分野のコンテンツが検索結果で高い順位を獲得するためには、単に情報が網羅されているだけでなく、その情報が誰によって、どのような根拠に基づいて書かれているかを、Googleの評価者(Quality Raters)やアルゴリズムに明確に示す必要があります。情報源の信頼性が低い、あるいは作成者が不明瞭なコンテンツは、たとえ内容自体が正確であったとしても、YMYLの基準から低品質と見なされ、検索順位が大きく下がる傾向にあります。
YMYLコンテンツ作成者が取るべき対策
YMYL分野でユーザーの信頼を獲得し、検索エンジンからの評価を高めるためには、徹底した品質管理と透明性の確保が不可欠です。
①専門家による監修・執筆の明記
・コンテンツ作成者が医師、弁護士、税理士、金融の専門家など、関連する資格や専門知識を有していることを明記します。
・専門家が直接執筆していない場合でも、必ず専門家による監修を受けていることを明確にし、その専門家の氏名、資格、経歴などを具体的に示します。
②情報の出典と正確性の確保
・記載されているデータや事実は、公的機関(厚生労働省、国税庁など)、信頼できる研究機関、専門誌といった信頼性の高い情報源に基づいていることを示し、出典リンクを明記します。
・特に医療や法律など、情報が更新されやすい分野では、情報の最終更新日を明記し、常に最新の正確な情報を提供し続ける必要があります。
③運営者情報の透明性
・Webサイトの運営主体(会社名、個人名など)、連絡先(住所、電話番号、メールアドレスなど)を「会社概要」や「プライバシーポリシー」などのページで明確に公開します。誰が、どのような目的で情報を提供しているのかをオープンにすることが、サイト全体の信頼性に繋がります。
④客観的な情報の提供
・個人的な意見や感想ではなく、客観的な事実や根拠に基づいた情報提供を心掛けます。個人の体験談を記載する場合でも、それが一般的な事実ではないことを明記するなど、誤解を招かない配慮が必要です。
YMYL対策の本質は、Googleのアルゴリズムを欺くことではなく、ユーザーの人生や財産を守るという倫理観に基づき、「ユーザーにとって最も安全で信頼できる情報を提供する」という姿勢を貫くことにあります。インターネット上の情報過多時代において、YMYLの基準をクリアする高品質なコンテンツを提供することは、社会的責任を果たすことと同義であると言えるでしょう。質の高い情報発信を続けることこそが、結果として検索エンジンからの高い評価と、持続的なサイトの成長をもたらします。